blog:根津のまちで仕事を創る >blog index

スタッフのつぶやき

〔目からウロコ本 その6〕 ジョン・P・コッター著 「幸之助論」

posted on 2008年11月12日 01:50

主婦スタッフYbによる「目からウロコ本」。第6回で取り上げるのは・・・
 「幸之助論 ~ 経営の神様 松下幸之助の物語 」
 (ジョン・P・コッター著、金井壽宏 監訳、高橋 啓 訳:ダイヤモンド社)

 「松下幸之助」といえば、いわずとしれた経営の神様と謳われた人物、たった3人(妻と義弟)で始めた町工場を一代で世界企業へと育て上げたパナソニックの創始者である。
 本書は、その松下幸之助の生涯をまとめた伝記である。
 しかし、伝記といってもこれは歴史家が書いたものではなくて、ハーバードビジネススクールのとても有名な経営学者(リーダーシップ論専攻)が書いた「分析的伝記」である。読み物としてだけではなく、松下幸之助の人生を振り返ることで、リーダーシップ論として何かを学ぼうという試みがなされている。

 松下幸之助の仕事人としての人生は、9歳からはじまる。父親の事業の失敗などもあり、9歳で丁稚に出されたのだ(9歳といえば現代なら小学3年生。え~うちの娘といっしょだ)。
 学校に通ったのはそれまでで、松下幸之助は学校教育をほとんど受けていない(いわゆるエリートではない、ちなみにソニーの創始者の井深大と森田昭夫は大学の科学系卒である)。極貧生活ゆえに、次々と兄弟や親などを亡くし、心身ともにつらい少年時代を過ごしている。こうした苦境が、幸之助の人格形成、人生・経営ポリシーへ大きく影響していると著者は分析している。

 さて、エンパブリックでは、ファシリテーター型のリーダーシップこそが現代のビジネス社会で必要と考えているが、本書を読み進めていると、松下幸之助の経営姿勢が、エンパブリックの考えるリーダー像と共通するところが多いことに気づく。
 本書のように、幸之助という特殊な時代と環境にあった人物を対象として、個性記述的方法でリーダーシップを分析することが、本当に現代におけるリーダー像への一般化につながるか(学べるか)という懸念もあるようだが、その点については問題ない。
  例えば、幸之助の経営スタンスに「周知(集団の知恵)を重視する」というものがある。人には「無限の潜在能力と無限の可能性がある」とし、困難な問題に遭遇したときには、できるだけ多くの人に知恵を借りること、視野を広げてみることとしている。
 また、幸之助は一番大事なことは、「素直な心を持つこと」としている。自分の知識だけで行動してはならず、相手がだれであれ何か学べるかと期待して人の話を聞けば予想外の知識が得られるとしている。
 このことから、松下幸之助はリーダーとしての強力な存在感がありつつも、独裁者ではなく、むしろ現代の社会に必要とされる自立分散協調型に近いような発想の持ち主だったのではないかと感じる。

 また、「先入観を持たずに事実を捉えよ」「慣習に甘んじるな」といったことも幹部社員に説いているが、先入観を持つなというくだりなどは、3回目にご紹介したラーニングオーガニゼーションの考えの中の「メンタル・モデルの克服」に通じるところがある。
 さらに言えば、本書の中には、いわゆる「システム思考」ができていた人物であることも推測される出来事も多く見受けられた。戦後、会社が高度経済成長期に大きく成長し、その後さらなる利益を出さなくてはならない時に幸之助が採った策は、なんと大幅な従業員の賃金の引き上げであった。利益を出すなら低賃金を強いるべきと考えがちであるが、幸之助は人々の反対を押し切り、逆に賃金を引き上げた。結果として、賃金を上げることにより従業員自らが、賃上げしてもなお他社の競争力を挙げるためには、抜本的な変革が必要であると気づき、それを実行し、会社はさらなる成長を続けることとなった。これぞまさにシステム思考といえないだろうか。
 
 ちなみに、現在では当たり前となっている事業部制、販売代理店制は、実に戦前から(昭和初期)導入されていた(これには私はかなり驚いた、著者は、松下幸之助がおそらく世界で始めて事業部制を導入した企業であろうとしている)。

 しかしながら、たぶん松下幸之助は、「メンタル・モデルの克服をしよう」「システム思考をしよう」としてこのようになったのではない。彼は、ハーバードビジネススクールで経営を学んだわけでもなく、誰かからこのような発想や思考をしなさいと訓練されたわけではない。また、事業部制についてもマッキンゼーなどのコンサルティング会社からの指導があったわけでもない。
 すべて松下幸之助が、自らの経験から考え、実行したものなのである。
 こうしたマニュアルに頼らないやり方、自分で考え決定する力は、皮肉にも、大量の情報が行き来し、経営に関する様々な手法が生み出される現代において、最も必要とされている「リーダー資質」であるといえないだろうか。だから、この「幸之助論」から学ぶべきものは大いにあるといえるのだ。

  そして少々精神論っぽくなってしまうが、監訳の金井壽宏は、本著で得る最大の教訓は「艱難なんじを玉にす」(人は経験から、学ぶ。それも苦境を経験してこそ大きく一皮むける)であるとしている。また、さらに言うならば、「生涯発達」という考え、つまり常なる成長意欲も大いに学ぶべきものであるとしている。
 松下幸之助のお気に入りの詩の一節は、「青春とは人生のある期間ではなく、こころの持ち方を言う。薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな肢体ではなく、たくましい意思、ゆたかな創造力、炎える情熱をさす。青春とは人生の深い泉の清新さをいう。」となっている。中年真っ只中の自分自身を照らし合わせ、大いに反省する。

  おりしも、今年、松下グループは「パナソニック」となり、企業名に松下の文字はなくなってしまった。また、三洋電機との合併も決まった。三洋電機は、松下電器の創立メンバーである義弟、井植歳男が創業した会社である。社員でもないのに、松下の名前がなくなる寂しさを感じ、三洋電機は、結局は兄貴のところに帰ってきたのかなどとのんびりノスタルジックに考えているのは、私だけかもしれない。
 (注)著書に従い敬称を略させていただきました。

〔目からウロコ本 ☆バックナンバー☆〕
 第5回 地球のなおし方
 第4回 レクサスが一番になった理由
 第3回 最強組織の法則
 第2回 発想する会社
 第1回 ワークショップ・デザイン

blog:根津のまちで仕事を創る
スタッフのつぶやき>>
プロジェクト・レポート>>
ワークショップ・レポート>>
根津の街歩き!>>
根津スタジオ ガイド>>
根津スタジオからのお知らせ>>
根津スタ2F「根津の茶の間」>>
    
RSS(atom)
月別アーカイブ
メールマガジン「根津の街から」

メールマガジン配信中
登録・解除はこちらから

募集中のワークショップ

» もっと見る

活動中のサークル

こだわり × つながり = 始まり

まち学

ワンランク上の定期演奏会を!

アニマート・アカデミー

私もそろそろ・・・

スイッチオンゼミ

消費側から作る側に視点を変える

プロシューマジム

仕事も暮らしもどっちも大事

ワークライフイノベーターズ

ソーシャルな仕事を作る

社会的企業ビジネススクール

大人の勉強は楽しい

公と私を考える会

スケジュール

根津スタジオの
WSスケジュール

#