はじめに from 書籍「共に考える講座のつくり方」

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はじめに

私たち一人ひとりは日々、さまざまな経験を重ねて生きています。経験を通して学んだこと、気づいたこともたくさんありますが、それを人前で紹介する機会はあまりないかもしれません。しかし、自分の経験から得た気づきや学びが、他の人の役に立つ可能性はとても高いのです。

みなさんも、これまで経験しなかった出来事が起きたときに、その経験を先にしていた人を思い出し、その「経験の先輩」に話を聞いてみて、役立ったと感じたことがあるのではないでしょうか。

子供を幼稚園に入れる前に少し年上の子供がいる近所の人に聞いてみたり、両親の介護が必要になったときに介護経験者の友人に電話を入れて自分ができることや利用できるサービスを教えてもらったり、就職活動のときに希望する会社の大学の先輩を訪問したりした経験が、きっとあると思います。
では、今度は、自分が自分の経験を伝える役割を果たしてみてはどうでしょうか?

ある会社員の人は、日頃、特許に関わる仕事をしていました。あるとき、友人が「著作権ってよくわからない」と言うのを聞いて、自分の仕事の経験から著作権に関する勉強会を開こうと思い立ちました。そして、友人に声をかけたら、20 人くらい集まり、勉強会はたいへん盛り上がったそうです。「自分が普段やっている仕事の話に、こんなに多くの人が興味を持ってくれるんだ」とびっくりするとともに、「みんなが知りたがっていることを教えることができて嬉しかった、自分の勉強にもなった」と感じたそうです。

他にも、育児の経験は、子育てに悩む若い親たちにヒントになるでしょう。大それた育児理論でなくても、保育園の使い方、生活の時間の使い方といった小さな知恵が大きなヒントになるはずです。それも、完璧にできたことだけに価値がある訳ではありません。自分が失敗したり、悩んだりして見出した小さなコツのようなものが、響くメッセージとなると思います。介護の経験も同様でしょう。

また、自分でお店を始めた人には、自分でも開業したいと思っている人へのヒントがたくさんあります。やりたいことをどう定めたのか、場所をどう決めたか、資金はどうしたのか、どうやって周囲の人の協力を引き出したのか、経営のポイントは何か……。開業し、経営したからこそわかるノウハウがたくさんあるでしょう。それは、サークル活動やNPO 団体などを立ち上げた人も同じでしょう。
自分の趣味の経験も、周りの人たちに参考になるでしょう。特に、興味を持っていてもどう始めたらいいかわからない、身近に仲間がいない人にとって、経験談はとても参考になります。

せっかく、一人ひとりの中にある経験や知恵があり、それは他の人たちに役立つのに、それぞれの人の中に眠っているだけで使えないなんて、もったいないと思いませんか?

ただし、自分の経験したことや考えてきたことをまとまりなく話しても、なかなか人に伝わらないでしょう。また、一方的に話すばかりでは、お説教みたいになってしまい、周りの人が引いてしまうかもしれません。

せっかくの経験を効果的に伝えるには、どうしたらいいでしょうか?
そのときに大切なことは、経験を「エピソード」にまとめて話したり、「お題」をつくって対話を進めていったりすることだと、私たちは考えています。

私たちの会社エンパブリックでは、一人ひとりの中にある思いや経験、知恵を持ち寄る「場づくり」をテーマに事業に取り組んでいます。
特に、一人でも多くの人が、場づくりを自分の地域や仕事の現場で実践できるように、ノウハウを体系化し、提供することに取り組んでいます。

エンパブリックの根津スタジオや各地での勉強会の参加者の方たちとのやりとりを通して、学びの場づくりを実践しようとすると共通して感じる課題やぶつかってしまう壁があることがわかりました。自分の経験を役立てたい方が、実践していくときの後押しやヒントになればと考え、まとめたのが、このテキストです。

みなさんの経験や知恵が社会に広く活かされること、その講座から新しい人のつながりが生まれることを願っています!

 広石拓司(エンパブリック)

 

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